平成22年度

モンロー・ドクトリンの歴史的検証

モンロー大統領の教書演説草稿のテクスト研究については、下河辺、その他大学院生が、アメリカの議会図書館、イェール大学バイネキー図書館などに出向きマニュスクリプト研究をする。②19世紀半ばから後半にかけて時期に、モンローのレトリックがどのようにアメリカ的拡張のレトリックとして教義へつくられていったかについては下河辺、巽が担当する。下河辺は、19世紀後半から世紀転換期にかけてのアメリカがどのように大陸的限界を越えて南北アメリカを「内包」する欲望をたくわえ、実施していったかをたどる。ことに、メキシコ戦争、南北戦争、米西戦争戦争の各時期にアメリカが自国民および国外へむけて発したメッセージを分析する。巽は20世紀前半のアメリカに見える「半球思考のねじれ」についての概念を固めモダニズム文学流星の期間と合致させて論じていく。軍事・政治・文化のあらゆる面で輝きを見せたアメリカにおいて、モンロー・ドクトリンの危険なねじれが隠蔽させてきた様子を明るみに出すことで、アメリカ的欲望の形にあらたなる解釈が得られるはずある。③20世紀前半のモンロー・ドクトリンの修正については、巽がすでに論文の中で整理していおり、以下の通りである。第一段階1904年のTeodore Roosevelt大統領による、西半球へのヨーロッパ列強の干渉阻止と西半球国家へのアメリカの干渉権の主張。第二段階1912年Henry Cabot Ledge上院議員が、メキシコのバハ・カリフォルニアへの日本実業家進出への拒絶。第三段階1950年George Kennanが南米の共産主義活動を根絶すると宣言。こうした流れを下河辺が再確認し、そのレトリック分析を行う予定。

アメリカ合衆国の逸脱と半球思考

①    半球思考についての最新の批評理論をまとめ、本研究との関連性をさぐる。なかでも、Wai Chee Dimock氏が2010年6月に来日するに際し、研究会への協賛を考えている。

②アメリカ合衆国の境界が崩れていく様子を観察する第一歩としては、まず「南部」に目をむける。舌津の専門である南部文学研究の中で、内部の他者としてのアメリカ性を考察する。

③日比野はアメリカの欲望の南下の指標の一つと考えられる南米へと本研究の領域を開いていく。1940年代にハリウッドやブロードウェイで流行った「南米ミュージカル」、活躍したブラジル人女優カルメン・ミランダの人気についてローズヴェルトの善隣外交との関連を調べ、ラテンアメリカを新たな市場として開拓しようとする映画産業の戦略によることを検証する。

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