2011年度第4回研究会:「最高経営責任者ターザン――米西戦争とローズヴェルトのインパクト」

2012年2月5日(日)16:00〜18:00 成蹊大学10号館2階第2中会議室

講師:小野俊太郎

講師紹介:文芸評論家・成蹊大学非常勤講師。文学研究・映画研究・ジェンダー研究。著書:『フランケンシュタイン・コンプレックス―人間は、いつ怪物になるのか』(青草書房、2009年)、『人間になるための芸術と技術―ヒューマニティーズからのアプローチ』(松柏社、2009年)、『モスラの精神史』(講談社現代新書、2007年)、『「男らしさ」の神話―変貌する「ハードボイルド」』(講談社、1999年)他多数。

 20世紀初頭に成立したアメリカ海兵隊の「海兵隊賛歌」は” From the halls of Montezuma / To the shores of Tripoli”と始まる。メキシコからリビアの沿岸までが活動範囲だという。海兵隊の紋章は西半球を中心に描かれているが、南北アメリカ中心で拡張主義的な欲望を体現するのがモンロー主義だとして、その質的な転換点はやはり米西戦争に求められるだろう。なぜなら、この戦争こそはフィルムに記録され、物流や戦略が研究され、科学的経営学を生みだしたものだからだ。
 米西戦争とその英雄テディ・ローズヴェルトの文化的な影響を考える上で、1912年に書かれた『ターザン』と『続ターザン』を参照したい。ハリウッド映画のイメージと異なり、近代社会の成功者となるターザンが描かれ、ジェーンへ求愛するためにアメリカへ渡ってライバルを蹴落とすことで結婚できる。ラフライダーズに参加できなかった作者バロウズが作品に込めたイデオロギーが、植民地経営と会社経営を重ねた新しいタイプの男性像を作り出していて、それがハリウッド映画を中心としたターザン神話の根底にあるのではないか。また、それはアメリカ南西部の先住民に注目した女性文化人類学者たちが、新しい人種像を見出しているのと拮抗している。こうした点を考慮しながら、ターザンが自学自習して自分の生活を経営していくヒーロー像を確立した道筋を考えたい。

関心をお持ちのかたのご来聴を歓迎いたします。会場整理の都合上、前日までに日比野(hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jp)にメールでご一報くださるようにお願いいたします。

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