2011年度第1回研究会:ブラジルにおける「国民的大衆音楽」の形成と変容

日時:2011年9月22日(木)18:30〜20:30
場所:成蹊大学3号館101教室

1930年代から現在に至るまで、大衆音楽はブラジルにおける国民統合の象徴として機能してきた。その端緒をなす、アフロ系混血文化であるサンバの国家的真正性獲得は、混血によって人種差別が克服されるとする「人種民主主義」の神話と不可分に結びついている。人種民主主義はフランツ・ボアズの文化相対主義の変奏ともいえ、またサンバの社会的威信の上昇においては、ディズニーのアニメやハリウッドにおけるカルメン・ミランダのイメージが大きな役割を果たしていた。つまり、大衆音楽を通じた国民統合は、合衆国のツールを用いて可能になったともいえる。他方、70年代以降、国家の支配的イデオロギーとなった人種民主主義や国民性論に対抗する文化運動が、ファンク、ヒップホップといった、合衆国の黒人音楽のスタイルを用いて起こっている。本発表では、ブラジル大衆音楽における「国民的なるもの」をめぐる実践的・言説的交渉の諸相を、特に合衆国との関係に着目しながら概観する。

講師:輪島裕介(大阪大学)
1974年生まれ。専攻はポピュラー音楽研究・民族音楽学・大衆文化史。著書に、『創られた「日本の心」神話—「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』(光文社新書、2010年)など。
コメンテイター:大和田俊之(慶應義塾大学)
1970年生まれ。専攻はアメリカ文学・ポピュラー音楽研究。著書に、『アメリカ音楽史—ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』(講談社選書メチエ、2011年)など。

関心をお持ちのかたのご来聴を歓迎いたします。会場整理の都合上、前日までに日比野(hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jp)にメールでご一報くださるようにお願いいたします。

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同日開催
成蹊大学アジア太平洋研究センター・共同研究プロジェクト:近代「日本」の表象形成と環太平洋の地政学
2011年度第1回研究会
2011年9月22日(木)16:00~17:30  成蹊大学3号館101教室
「仏作って、魂(ソウル)を探す。」:「日本の音楽」の代表としてのピチカート・ファイヴにおける作者、文化、日本の表象
講師:源中由記(東京藝術大学)/コメンテイター:佐藤良明(東京大学名誉教授)