日時:11月28日(月)18:30~20:30
場所:成蹊大学3号館101教室
基調発表:髙尾直知(中央大学):「世界改良のアメリカン・ドリーム─『セプティミアス・フェルトン』再読」
ワークショップ:「ホーソーン短編と戦争」:
松井一馬(慶應義塾大学大学院博士後期課程):「タイコンデロガ砦」
大武佑(成蹊大学大学院博士後期課程):「エンディコットと赤い十字架」
横山晃(立教大学大学院博士後期課程):「おもに戦争問題について」
コメンテイター:高尾直知
本基盤研究(B)は、「全体性」を志向する欲望と「部分」であることへの不安を刻印するモンロー・ドクトリンの普遍的な力学に注目しつつ、この言説がアメリカ文学・文化の空間的および時間的位相を定義づけてきた歴史的経緯をグローバルに検証する試みである。
今回は、まさにモンロー教書の同時代ともいえる19世紀前半、「若きアメリカ」の拡張主義のただ中に身を置き、さらには政治的猟官によってその恩恵をどの作家よりも多く受けながら、それでもなお時代を批判しつづけた作家ナサニエル・ホーソーンの初期短編と後記作品を取りあげる。執筆活動の最初期から、アメリカの拡張を批判していたホーソーンの基本理念とはなにか。あまりにも簡単に「曖昧」とされてきたその作品の底流に流れる、根本的な政治意識を明らかにして、21世紀的問題にも棹をさすホーソーン読解の指針を明らかにしたい。
まず基調発表では、これまで等閑視されてきたホーソーンの遺作『セプティミアス・フェルトン』から、南北戦争のさなかの最晩年、ロマンス執筆と格闘することで、同時にアメリカ的イデオロギーの発現とも格闘したホーソーンの批判意識を明らかにする。ついで、ワークショップにおいて、ピューリタン以来戦争によって自己規定しつづけるアメリカに対し、ホーソーンがいかなる政治的中間地帯を文学的に想像・創造しようとしたか、そのようすを「タイコンデロガ砦」(1836)、「エンディコットと赤い十字架」(1838)、「おもに戦争問題について」(1862)という作品を通じて考える。それにより明らかになるのは、従来保守的とも逃避的とも目されていたこの作家の、現実主義であり批判性であろう。
関心をお持ちのかたのご来聴を歓迎いたします。会場整理の都合上、前日までに日比野(hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jp)にメールでご一報くださるようにお願いいたします。