2012年度第3回研究会:自然主義文学と動物表象

1月27日(月)16:30-18:30 成蹊大学10号館2階第2中会議室

基調発表
折島正司(青山学院大学)
「食える犬、食えない犬――フランク・ノリス、ジャック・ロンドンと動物」
ワークショップ
「Jack London, “The Bâtard” と “That Spot”を読む」
石山愛梨(青山学院大学博士課程)
濟藤葵(慶應義塾大学博士課程)
高瀬祐子(静岡大学/成蹊大学非常勤講師)
コメンテイター:折島正司

本基盤研究(B)は、「全体性」を志向する欲望と「部分」であることへの不安を刻印するモンロー・ドクトリンの普遍的な力学に注目しつつ、この言説がアメリカ文学・文化の空間的および時間的位相を定義づけてきた歴史的経緯をグローバルに検証する試みである。

今回は、アメリカの自然主義文学に焦点をあわせ、そこに頻出する動物の表象について考える。世紀転換期に隆盛を極めた自然主義とは、ダーウィニズムに加え、米西戦争が象徴するテクノロジーと帝国主義をその背景に持つ思潮であった。この時代、西漸運動が終わりを迎え、国内のフロンティアを失った米国は、その欲望のベクトルを南へ、そして太平洋へと転じていくことになる。そうした動きのなかで、機械より身体性を前景化する動物、物言わぬサバルタンとしての動物のうちに、自然主義作家たちは何を見出したのであろうか。

まず基調講演では、ノリスもロンドンも、人間と人間の区別・人間と動物の区別がそう上手ではないこと、だが二人には違いもあること、とりわけロンドンには人間と対等な個体としての犬がいること、そしてそれが競争的な個人主義イデオロギーの鮮明な形象化であることを、折島が論ずる。

その後はワークショップ形式とし、Jack London, The Call of the Wild, White Fang, and Other Stories (Oxford UP, 2009)より、上記の短編2作品を取り上げて、若手研究者3名にそれぞれの視点から分析を行って頂く。あわせて、フロアーからも活発なご質問、ご意見を頂ければ幸いである。

関心をお持ちのかたのご来聴を歓迎いたします。会場整理の都合上、前日までに日比野(hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jp)にメールでご一報くださるようにお願いいたします。